ウォーターマン
「矢張り、ロボットしかないか」
「併しロボットではサイボーグの倍も経費がかかるし、維持に手間がいるのだろう?」
創世党のドン大沢が、江見に下問(かもん)した。
「はい」
「犯罪撲滅法で、死刑になる者を使えばどうだろう」
「併し、遺族が承知すまい」
久坂の提案を、磨生が否定した。
「この素晴らしい犯罪撲滅計画を公表し、有志を募る、というのはどうでしょう」
江見はサイボーグを使役(しえき)して犯行を防止するこの計略を、至上(しじょう)のものと信じている。
「否」
大沢が、口(こう)頬(きょう)を尖(とが)らせた。
「近代刑法においては、加害者の人権が最も大切にされている。ましてや犯罪未遂の者を殺害している現状の黒幕が、我々だと分かれば、民自党の格好の攻撃目標となることは、間違いない」
「だが犯罪を百パーセントなくすには、未然に防ぐしか方法はない。それに、ウォーターマンの評判も上々です」
「それは我々が義賊の背後にいることを、誰も知らないからだ。政府が犯罪を阻止(そし)する為に、犯罪未遂者を殺害していることが分かれば、今の様にはいくまい」
「大沢先生」
磨生は、久坂、江見と同じく犯罪撲滅計画を公にすべきだと確志(かくし)しているが、現政情下では時期尚早(しょうそう)だ、と分析していた。
「犯罪撲滅計画は、今のところ現状維持ということにして、懸案の省庁改革と遷都(せんと)について、論議いたしませんか?」
「まあ、結論を急ぐこともないか」
磨生内閣は、前世紀末より未決の儘となっている遷都&改革をキャッチフレーズに誕生した政権である。犯罪殲滅(せんめつ)も大事であったが、磨生はそちらの方を優先したかった。
四人のトップ会談は長引き、現在の省庁を九省一院に改編すること。全国を十六の州に分け、政治・文化・経済の三都制を採択すること等を合議したのである。
「併しロボットではサイボーグの倍も経費がかかるし、維持に手間がいるのだろう?」
創世党のドン大沢が、江見に下問(かもん)した。
「はい」
「犯罪撲滅法で、死刑になる者を使えばどうだろう」
「併し、遺族が承知すまい」
久坂の提案を、磨生が否定した。
「この素晴らしい犯罪撲滅計画を公表し、有志を募る、というのはどうでしょう」
江見はサイボーグを使役(しえき)して犯行を防止するこの計略を、至上(しじょう)のものと信じている。
「否」
大沢が、口(こう)頬(きょう)を尖(とが)らせた。
「近代刑法においては、加害者の人権が最も大切にされている。ましてや犯罪未遂の者を殺害している現状の黒幕が、我々だと分かれば、民自党の格好の攻撃目標となることは、間違いない」
「だが犯罪を百パーセントなくすには、未然に防ぐしか方法はない。それに、ウォーターマンの評判も上々です」
「それは我々が義賊の背後にいることを、誰も知らないからだ。政府が犯罪を阻止(そし)する為に、犯罪未遂者を殺害していることが分かれば、今の様にはいくまい」
「大沢先生」
磨生は、久坂、江見と同じく犯罪撲滅計画を公にすべきだと確志(かくし)しているが、現政情下では時期尚早(しょうそう)だ、と分析していた。
「犯罪撲滅計画は、今のところ現状維持ということにして、懸案の省庁改革と遷都(せんと)について、論議いたしませんか?」
「まあ、結論を急ぐこともないか」
磨生内閣は、前世紀末より未決の儘となっている遷都&改革をキャッチフレーズに誕生した政権である。犯罪殲滅(せんめつ)も大事であったが、磨生はそちらの方を優先したかった。
四人のトップ会談は長引き、現在の省庁を九省一院に改編すること。全国を十六の州に分け、政治・文化・経済の三都制を採択すること等を合議したのである。