ウォーターマン

　年明け早々、創世党長老大沢一郎が逝去(せいきょ)し、創世党のナンバー１は、名実共に磨生麗治となった。
　磨生は、日本革新を断行していく。参議院が廃止されて、議会は連邦議会のみとなり、議員は百六十名と大幅に減少した。省は国防、公安、科学、法律、文化、環境、国際、経済、産業の九省と監査院に統合された。廃(はい)県置州(けんちしゅう)が実施されて、全国は北海、陸奥、東北、北陸、関東、相武、中部、東海、近畿、山陰、山陽、中国、南海、西海、西南、南洋の十六州に分けられたのである。
　警視庁は相武州警察となった。北九州と下関を合併して関門京となす関門遷都案が、連邦議会で承認され、長年の遷都論議に終止符が打たれた。政治は関門、経済は東京、文化は京都と、三都が定まった。
　磨生の父は、中国人と日本人の混血児であり、磨生も台湾人と婚姻(こんいん)している。磨生はアジア連合構想を打ち出しており、ＥＵの如きものを、アジアにも創出しようとしていた。その実現の為には、東京よりも関門の方が、アジアという視点で、行動しやすかったのである。
　関門は首都建設の為一気に活性化していき、東京は東京府（百万都市は市ではなく、府という行政単位となった）となった。友安達江戸っ子は、一抹(いちまつ)の寂寥感(せきりょうかん)を嘗(な)めつつも、
「これで東京は、あの馬鹿馬鹿しい程の人口過剰から、少しは解放されるだろう」
　と楽観していた。
　関門遷都は一年後と定められ、日本は新生の時を待望している。新憲法が遷都と時を同じくして公布される予定である。日本国から、磨生の提唱する日本帝国へと生まれ変わる過渡期に、神州はあった。