僕の机のスミの恋人


本日も好調な俺は、お昼を食べた後、放課後がとっくに過ぎるまで『睡眠学習』に励んでいた。


「ふぁ〜あ……、勉強熱心なこったな」


春も初めのこの頃は、まだ日が短くもう外は紅い世界に包まれていた。無意識に開いたままの窓とカーテンを閉めた。

く、っと伸びをして枕がわりにしていた鞄をとった。


「帰りますか」


ふと、鞄がのかれた机を横目で見た。そして、机のすみっこに見覚えのない汚れを発見した。

近づいて目を懲らしてみると『それ』は、汚れではなく文字だった。


(おはよう。)


っとかかれている。
この机になって1ヵ月未満だが、ベッド化している俺様の『寝具』にこのような文字は存在しないはずだ。

歩という可能性もあるが、あいつにしては弱々しい筆跡である。


――じゃあ誰だ?


浮かび上がる疑問、そして教室に響き渡る俺のお腹の音。

(ぎゅるるるるるる)

練習熱心な野球部の声の2倍はでている気がする。

人とは不思議だ。寝ただけでここまで切ないお腹の音を出せるのだから……


「かえろ……」


俺は、『文字』の下にこう書いた。





――――腹へった。






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