僕の机のスミの恋人
家に帰る前に教室に向かった。鞄を置いたままだからだ。
放課後まで寝るんだから、持ってくればといまさら後悔する。
そもそも鞄なんて空っぽだし、持って帰っても開けずにまた学校にくる。
無駄に等しい行動だ。
2-1の教室は、階段に近いので、下におりるついでに寄っていけた。
(ガラガラガラ)
味のある音をたてながら扉をひらいた。この時間に人は誰もいない。
しかし、なにかの気配を感じた。
「ついてます」
「うわっ?!」
突然の声に背筋が凍る。
吉井花だ……というのは言うまでもない。今度はいったい何がついているのだろうかね。
「……………」
神出鬼没なうえに無口。ミステリーでしかない生命体である。さらに不思議なことに、俺にしか口を開かない。
だからいったい俺はいつからモテるようになったのだよ。
「なんかようか?」
「…………」
ほっといて鞄をとろう。そう思って、自分の机の方へ向き直った。
そしてある異変に気づく。さっき感じたなにかの存在は吉井花ではなく俺の机の上にあることを……
「へ?」
この場には相応しくないものが俺の机に並んでいた。
白米の入ったお茶碗・豚汁らしきもの・サバの開き・たくあん………
晩飯?