僕の机のスミの恋人
全て残さず完食し、箸をおいた。その間吉井花は俺を眺めつづけていた。
ドキッとするじゃないか……
「……おっほん」
一瞬血迷ったが気にしないでくれたまえ。
食べ終えた食器を一つにまとめた。食器の塔が完成したとこで、机に文字が書かれているのに気がついた。
昨日の「おはよう」と「腹減った」という文字に続き、「召し上がれ」という文字が増えていた。
「腹減った」に対する返答だろう………
何者ですか!?
「ついてます……」
「まじ?」
「ついてます」
「……………」
ホントに憑いてるのだろうか? しかし、親切な幽霊もいたもんだ。
俺はこうみえても紳士なんだ。お礼は幽霊だろうが、ちゃんというぜ!
―――うまかったぜ!
簡潔に、かつ全力にお礼を述べた。
それを机に記入したとこで、俺はカバンをとって席をたった。沢山寝て沢山食った……余は満足じゃ。
「かえる?」
「おう、途中まで一緒にかえるか」
「………」
言葉の変わりにコクりと頷いた。イエスの意思表示であろう。
案外、吉井花は永いつきあいだ。家が、わりと近所だったので、幼稚園の頃からずっと俺に憑いている。
昔はもっと無口で、古い付き合いの俺や歩、太田などには多少の言葉を交わす。
またっくもっての珍獣だ。