僕の机のスミの恋人
日はとっくに落ちていて、美しい紅の世界から漆黒の闇が訪れた。
といっても近頃できだした大きな建物なんかが24時間フル稼動しているため、ちっとも暗くない。
俺は、明るい夜道を吉井花とトボトボ歩いた。
吉井花は黒髪のロングをゆらゆらと腰までおろしている。顔立ちは意外に整っており、「和」という言葉が似合いそうな、厳格な美しさだ。
だが、頭ん中はよくわからん………
何事もなく俺らの帰路が変わる三差路に到着した。
「んじゃあな」
――コクり
久しぶりに一緒に帰ったにも関わらず、無表情に去っていった。
気のせいだろうか、最後に「ついてます」ときこえたのは……
間もなくして、我が家に到着した。とりわけ大きい分けでもなければ小さい分けでもないやんごとなきジャパニーズハウスである。
もちろん近代的な意味でのそれであって、木造で瓦屋根の平屋は想像しないでくれたまえ。
家族構成は、母親が現在この家の主で、父親はグローバルな仕事柄なせいかアメリカに単身で赴任している。
俺がお腹の中にいるとき、その赴任先で青少年に有害な行為を行い、うっかり孕ませたのがみのりである。
もちろん母さんはそのことをしらない。しられてはいけないのだ。