僕の机のスミの恋人
「まだだよ」
「え…………」
実はおそらく‘約束’の事をいっている。そして彼女はその‘約束’を果たせと、遠回しに俺に告げていた。
彼女を抱く汗ばんだ手は放すことも出来ず、ただ彼女を包んでいた。もう片方の彼女の口をおおう手は、彼女の呼吸を確認しながら硬直している。
「……覚えてたのか?」
「うう〜。僕は挨拶でもチュウはしなかったんだよ!」
そんなに俺の唇が欲しいのか。照れるぜ。
とまぁ、照れ隠しのノリもそう長く続くは続かない。
俺の手をそっと握ってくる実が愛おしくてたまらない反面、彼女の唇しか見ていない俺がいた。
少しずつ俺は彼女の唇に吸い込めれていった。いや、近づいてきているのは実だった。
お互いの吐息が感じられる距離。俺に拒否権はない、拒否する理由もない。
むしろお願いしたいくらいだ。今日、転校初日で、クラスの人気者に成り上がるほどの可愛さだ。
そして彼女は俺を求めていて、俺も……
甘い香り、唇の距離がゼロに近い。
(………)
8時過ぎ
無音
無言
次第に激しくなっていく心のままに強く緩やかに時が流れ、止まったかのようなほんのひととき――………………………………。