僕の机のスミの恋人

「もーっ、怒んないでお兄ちゃん」


実との登校。ポカポカとした日差しが全身の力を吸い取ってゆく。


「怒ってねぇ」

「じゃあなんでそんなに早歩きなのー?」


俺は実との距離を3メートル開け、すたすたと歩く。寝起きにはこれも激しい運動になっているのか、すでにばてていた。


「うっにゃっ!?」


背中に実がぶつかる。俺が急に止まったから当然なんだが……


「なんで止まるの?」

「いや、別になんでもねぇよ」


実の頭上の無数のハテナマークを潰すように、頭の上に手を置いた。

ずっと首を傾げる実。

さくらんぼのみたいに、真っ赤にしたほっぺが可愛らしい。


春先の桜舞う通学路。登校完了のチャイムが遠くから微かに聞こえ、力無くして走るのをやめる学生。中には、おろしたて制服の一年生もいる。

それを見ながら自分をうつし、笑う。


なんだか清々しい朝だ。そんな朝にまた青春を見つけた……


「今日はいいことがあるな」





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