僕の机のスミの恋人
ゆう君ってぎこちなかったな。いや待てよ、その前にお兄ちゃんって言ってたような気がする……
余計に不自然な感じになってたよな? これならいつ、母さんにばれるかわかったもんじゃない。
実には少し厳しくいっとかねば。
―――突然視界を失う。
それと同時に「だーれだ?」という声が俺にかけられた。
べた過ぎて言葉がでない。ついでに、皆無に等しいまな板を背中に押し付けられても……
「なにやってんだ」
手をほどいて、振り返る。
「ぶー、つまんない」
「はぁ……」
まったく呆れるほど子供だ。膨れたと思ったらまた笑顔でハグ。
気まぐれな子猫みたいだ。
「話があるんだがいいか」
「お母さんのこと?」
驚いた。ちゃんと話はわかっていたようだ。普段はとぼけいてるが、思ったより理解力というか常識的な考えはあるみたいだ。
ならなぜ危険をおかして会いに来る?
「僕には関係ないから。これはパパとお兄ちゃんのママの問題」
「ばかやろ!!!」
抱きついてる実を突き飛ばした。実は全部理解したうえで、自分には関係ないと言い張ったのだ。
怒りが込み上げてくるのがわかる。一発殴ってやりたい。
「お兄ちゃん? 顔がこわいよ」
「……………」
強く握って赤くなった拳をしまう。殴っても同じか。
「か…………れ」
「え?」
「かえれ!!!!!!!!! 二度とくんな!!!!!」
溢れた。実にぶつけてもしかたのない、不安や怒りやいろんな気持ちまでも全部溢れた。
頭では言ってはいけないと、わかっていても。激昂した心が理性を振り払った。
実はなにもいわず俯いて、帰っていった。泣いてたかもしてない。
今の俺に他人を想う余裕はなくなっていた………