僕の机のスミの恋人
Frm 桜川 歩
Sub Re2:
>もぉ、ばかなんだから!私の家の近くの公園だよ
知ってるよね?
はやく来てね。
俺のメールからすぐにメールが返ってきた。
お風呂の香りが、汗で消えない程度に急いで公園に向かうことにした。
通り過ぎるカーブミラーや車の窓で、自分を何度も確認する。そう、ナルシストのように……
「自分がキモくて鳥肌たったぜ……」
なんて馬鹿してるうちに公園が見えてきた。比較的、歩の家も公園も俺の家から近い方だ。
俺は最後にいったん停止して、深く深く深呼吸をした。
―――さぁ、男の戦だ。
公園に着いた。そしてはしから見渡す……
左からベンチ、滑り台、砂場、つり輪、シーソー、鉄棒、ブランコ。
「あれ? まだ来てないな」
緊張がいったんほぐれた。何度見渡しても人がいる気配はない。
「なんか緊張して損した」
公園の遊具は、真ん中の電灯を囲むように配置されている。そしてさらに、公園を囲むように満開の桜が幻想的に咲き乱れている。
俺は電灯の下で待つことにした。
「遅いよっ」
不意に背後から声がした。間違いなく歩の声だ。昼間の嫌味な優等生の声じゃない、優しい女の子の声だった。
男見せなよ……太田の言葉が蘇る。
急に彼女が愛おしくなって、振り向こうとした。
「だーめ!」
しかし彼女は、俺の背中に自分の背中を張り付けて、汗ばんだこの両手を後ろから握りしめた。
振り向けない
「ゆうちゃんお風呂入ったばっかし? いい香りする」
「お……おう」
めちゃくちゃ動揺した声を出してしまった。
後ろからずっと香る、とろけるような女の子の香りが俺をどんどんダメにしてしまう。