僕の机のスミの恋人
しばらく無言になって、お互いの手を握りあった。
そっと涼しいが風ふいてきて、歩の声が届いた。
「ゆうちゃんにききたい事あるんだ」
やっときた。実を言うとまだ返答に困ってる。
可愛いって思ってるのは間違いない、でも、好きかはわからない。
「……なんだ?」
期待よりも大きい不安があった。夢のような気がした。でも、握りしめてくる歩の手は現実だった。
「ゆうちゃんって、好きな人いる?」
曖昧とわかっていても、この言葉以外思いつかなかった。
「……わからない」
歩はクスクスと笑った。俺の強張った顔が、少し緩んだ。
「昔からそうゆうの、うといもんね」
「おう……」
とても申し訳なくなる。
「私ね、昔からね、ゆうちゃんのことが……」
俺は結局、回答が見つからないって結論がでていた。だから、歩が全部言う前に俺は両手から小さな細い指をほどいて、前に駆け出していた。
そして、目の前にあった滑り台の傾斜を走って駆け上がった。
俺は滑り台のてっぺんで夜空に向けて独り言のように喋っていた。
「俺には可愛い幼なじみの女の子がいる。他の女の子と比べたら比較出来ないほど大事な存在かもしれない!!」
もうほとんど叫んでる感じだった。
「でも、好きかどうかわからない! だから待っててほしいんだ!! 俺が納得いく時まで! その時は、俺の方から言うよ……」
いったん呼吸を整え、お腹の底から、心の底から叫んだ。
「大好きだって!!!!!」
いつになるかわからないけど、待っててくれ……