上司に恋しちゃいました
仙台駅からほど近いビジネスホテルに、鬼の王子は入っていった。


いつものホテルとは違う、縦長の簡素なホテル。


細長く大きいルームキーをロビーで受け取り、パソコン数台が置かれている机と、自動販売機が置かれている廊下を渡って、エレベーターに乗った。


キョロキョロと落ち着かずに辺りを見回しているあたしを見て、鬼の王子は「もしかしてビジネスホテル初めて?」と言った。


「はい。あたしは出張することなんてないですから。でもビジネスホテルって、ホテルとそんなに変わらないんですね」


「それはどうだろう。部屋を見ても驚かないでくれよ」


鬼の王子は困ったように笑うと、ルームキーを差し込んだ。


驚くなと言われたのに、ちょっとだけ驚いてしまう。


余計なものは何ひとつないシンプルな造り。


ベッドが二台と、書斎に置かれるような机の上に、小さなテレビと電気ポットが置かれていた。


いつも行くホテルは開放感があるけれど、この部屋は清潔だけど窮屈なかんじがする。


似ているようでやっぱり違う。


これがビジネスホテルかと感心した。



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