上司に恋しちゃいました
「これを見たら、奥さんどう思うでしょうね」


白いシャツにくっきりと残された、口紅の跡。


あたしはしたり顔を浮かべてから、真っ青になっている鬼の王子に、侮蔑の眼差しを向けた。


あたしのことを、何も反抗できない女だと思った、あなたが悪い。


妙にすっきりした気持ちで椅子に座り直し、再びパソコン画面を見つめた。


……やってやった。


あたしは笑いたくなる顔を必死で押し殺し、クールな表情を作るのに必死だった。


「どうせ勘違いされるなら、既成事実にしてしまえばいい」


鬼の王子の冷静な声。


……既成事実?


何を言っているのかと思って、ちらっと視線を向けた途端、綺麗な顔が覆いかぶさってきた。
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