上司に恋しちゃいました
やばっ! 鳴っちゃった!
と顔面蒼白になっていると、目の前の鬼の王子が耳を赤く染めながら「すまん」とひと言呟(つぶ)やいた。
ばつが悪そうに、人差し指で頬をポリポリかきながら、目を泳がせている鬼の王子を見て、思わずぷっと吹き出した。
その途端、腹筋の力が緩まり、きゅるるるる、となんとも間の抜けた音が響いた。
鬼の王子は一瞬何が起こったかわからないといった顔で固まり、音を出したのが誰なのか気付くと、豪快に笑った。
「もう、笑わないでくださいよ!」
「お前だって笑っただろう。あ、やばい、笑うとまた腹が鳴る」
あたし達はお腹を押さえて、おでこを寄せて囁ささやき合った。
「俺ら、恥ずかしいな」
「ですね」
そしてまた、ふたりで笑い合う。
両手でお腹を押さえながら額を寄せ合って笑うふたりを見て、他のお客達は、何がそんなにおかしいのだろうと小首を傾げた。