上司に恋しちゃいました
気のよさそうな柔和な顔をしたおばさんによって運ばれてきた牛タンを見て、鬼の王子とあたしは一瞬目を丸くした。
「これ、牛タン?」
思わず鬼の王子が呟いてしまったのも無理はない。
写真である程度の想像はついていたけれど、実物を見るのとでは全然違う。
まるでステーキのように分厚い肉は、いつも焼肉屋で食べているペラペラのスライスされた肉とは似ても似つかない風貌だった。
あまりの分厚さに噛み切れるかなと思いながら、恐るおそる口にしてみたら、とろけるような柔らかさにびっくりした。
「えっ!? これが牛タン!?」
あたしも思わず声に出してしまった。
分厚く切られた牛タンは、おそらくホルモンのようにコリコリしているのだろうと思っていた。
それなのに、ステーキよりも柔らかい触感に、度肝を抜かれた。