上司に恋しちゃいました
その時、すくい上げるような風が躍って、梅の芳潤な香りが身体を包み、髪の毛を揺らした。
解けた真珠のネックレスのようにパラパラと香りは拡散していき、やがて土に溶け込んでいった。
繋いだ手と手。
鬼の王子の左手には何もはめられていなかった。
けれど、目を凝らさなければ見えないくらい薄く、ぼんやりとした、日焼けによって白く残った指輪の痕があることに、あたしは目ざとく気付いてしまっていた。
比翼塚を後にしたあたし達は、大きな本堂へ向かい、参拝することに。
合掌し目を閉じると、ある想いが湧き上がってきた。