上司に恋しちゃいました
穴が開いているだるまの頭の中を覗くと、小さなだるまがびっしりと入っている。


このだるまがおみくじらしい。どの子にしようか選んでいると、一体のだるまと目が合う。


だるまは手作りなのか、一つひとつ顔が微妙に異なっていて、あたしと目が合っただるまは、たくさんいるだるまの中でも、とても恐い顔をしていた。


眉間に皺を寄せている顔が、オフィスでの鬼の王子の顔と重なって、あたしはこのだるまを選んだ。


小さなだるまのお尻におみくじが入っていて、あたしはそのおみくじを引っ張り出すと、紙を広げた。


氷のように固まったあたしの手のひらに広げられたおみくじを、鬼の王子が覗き込む。


鬼の王子は目を丸めて驚くと、何も言わずにポンポンとあたしの肩を叩いた。


その肩が小刻みに震えていて、笑いを必死に押し殺しているのがわかる。

< 138 / 341 >

この作品をシェア

pagetop