上司に恋しちゃいました
「……大吉って」


思わずこぼれたあたしの言葉に、鬼の王子は気まずそうに目を泳がせた。


な、何この違い。


天と地、月とすっぽん、天国と地獄!?


おみくじを持ちながら、わなわなと震えているあたしを見て、鬼の王子は慌ててあたしを励ました。


「でも、ほら。中身読んでみろよ。意外といいこと書いてあるぞ。

それに比べて俺のは──このみくじにあたる人は、人の上に立つ身分なり。ただし災い起こるとも自身気付かざるときは、のぞみ事叶わず。よく信心してつつしみあるべし──だってよ。

なんだよ望み事叶わずって」


鬼の王子に言われて、中身をじっくり読んでみた。


〈よろこび事、おそくあり。のぞみ事、かなう〉


確かにいいことは書いてあるけど、それは大凶だからあんまり気を落とさないための優しさなのでは? 


おみくじにも気を遣ってもらってるあたしって……。


〈考えすぎは災い事まねく。正直にして信じるべし〉


大凶ばかりに気を取られていたあたしは、お互いのおみくじに書いてあった大事な箇所を、軽い気持ちで見過ごしていたのだった。

< 140 / 341 >

この作品をシェア

pagetop