上司に恋しちゃいました
最初は鬼の王子に後ろから抱きしめられながら、肩まで浸かっていたのだけれど、外の雄大な景色にだんだん開放的な気分になってきた。


「おいで」 


鬼の王子が自分の膝を軽く叩く。


誘われるがままに、鬼の王子の膝に座る。向き合うと、ほんの少しだけあたしの顔が鬼の王子よりも高い位置にあるので、前髪がしっとりと濡れた、鬼の王子の色気ある美しい顔をじっくりと見ることができた。


鬼の王子は上目遣いであたしを見つめた。


そして、そっと濡れた指先であたしの髪を撫でる。


「寒くないか?」


「いいえ、大丈夫です」


背中に冷たい夜風が当たっていた。


そんなこと気にも留めないくらい、あたしの身体の奥が熱くなっていく。


鬼の王子の顔を両手で挟むようにして、上からキスを落とした。


いつもとは逆の立ち位置。


それが新鮮で、あたしはどんどん大胆になる。


頭の芯が痺れるような甘い刺激に酔いしれる。


遠くの方で、波しぶきの音がした。


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