上司に恋しちゃいました
けれど、それから鬼の王子は、何かとあたしに文句をつけて怒鳴りつけてきた。
悔しくて、見返してやりたくて、憎たらしかった。
「最初は気取った女だなと思ったんだよ。
……まあ、綺麗だなと思って一瞬目を奪われたことは事実だけど。
でも笑わないし、いつも淡々と仕事していて、ミスなく完璧にこなしてた。
でもすぐに気付いた。
こいつはひとりで仕事してるって。
自分ひとりで抱えて、ひとりで仕事している気になってるって。
今はもう気付いてると思うけど、仕事ってひとりじゃできないだろ?
いろんな人間が支えてくれて、初めて回っていくんだ。
どんなに優秀な人間でもひとりじゃできない。
誰かに助けてもらわなきゃ何もできないんだ。
それに気付いてほしくて、誰にも怒られたことなさそうだったから、俺が怒ってみた。
俺、男には厳しいけど、女には怒鳴らないだろ?
女の子はさ、期待してるから怒ってるのに、傷ついて辞めてしまうから、怒鳴らないようにしてたんだ。
辞めたら意味ないから、最初はちょっときつめに注意する程度で。
そしたらさ、俺を睨みつけて、これでどうだと言わんばかりに仕事をさらに正確に速く仕上げてくんの。
こいつは案外、根性あるなと思って、ちょっと難易度の高い仕事を頼んで、周りと協力する大切さを学んでもらおうと思ったら、信じられない速さでひとりで解決してきた。
そんなに仕事ができるなら、何で言われたことしかやらないんだろうと思ってさ。
厳しくする程どんどん成長していくから、俺もつい男みたいに扱っちゃって」