上司に恋しちゃいました
「要はあたしのこと、女として見てなかったってことですね」


「いや、それは違う。女として見てなかったら無理やりキスなんてしてない。

冷静さを失う程、お前に惹かれてた」


眩暈(めまい)がするほど、甘い言葉だった。


「俺、何言っちゃってんだろ。ほら、早く寝ろ」


鬼の王子は口に手を当てて、赤くなった顔を隠していた。


もしかして、照れているの? 


無理やり寝かしつけようとする仕草が、とても愛らしくて。


「ずっと、手を握っていてくれますか?」


あたしのわがままに、鬼の王子はとても優しい笑顔で「もちろん」と言った。


鬼の王子がこんなに優しい顔をするなんて、怒鳴られていた頃は想像もつかなかった。


こんなに好きになってしまうだなんて。


大きな手に包まれながら、あたしは安心して眠りに落ちた──。


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