上司に恋しちゃいました
行きとは違い、帰りの新幹線の中は混雑していた。


子供の笑い声や、駅弁の匂い。


左を見ると、窓の外には田園風景が広がっていて、右を見ると安心したように眠る、鬼の王子の横顔。


昨晩、鬼の王子はほとんど寝ずに看病をしてくれた。


朦朧(もうろう)とした頭でも覚えている。


氷をタオルに包んで額や首筋を冷やし、汗が出たら小まめに拭いてくれた。


そんな献身的な看病のおかげで、あたしはすっかり体調がよくなった。


時間が進むにつれ、近付く夢の終わり。


田園風景を抜けて、電車が人工的な街並みを横切っていく度に、あたしの心はささくれだっていった。




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