上司に恋しちゃいました
女の子数人が、鬼の王子のデスクを取り囲むように立っていた。



猫撫で声が神経を苛立てるのはいつものこと。



あたしは、彼女たちの姿を見ないように、いつも以上にパソコンに顔を寄せていた。



「課長の奥さんってどんな方なんですかぁ?」



キャイキャイと騒ぐ彼女たちの声が、氷の刃のように胸に突き刺さった。



タイピングしていた指先が止まって、背中に冷たい汗が伝った。



「あ、俺も興味あります! 課長って奥さんの話、しないですよね」



興味深々といった様子で、事務用椅子にもたれかかって男の子たちも会話に混ざりだした。



気になるけど、聞きたくない。



耳を塞いで、この場から逃げ出したい衝動に駆られた。



目をぎゅっと瞑って、平常心を呼び起こそうとした。



トイレに行くふりをして、何食わぬ顔でオフィスを出ようか、そう思っていた時、鬼の王子の視線を感じた。
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