上司に恋しちゃいました
「部長、課長の奥さんに会ったことあるんですか?」
「まあな。結婚式にも出たからな」
「へぇ、そうだったんですね」
「鬼木は照れ屋だから部下には話さないけど、俺にはよくノロけてくるぞ」
「ちょっと、部長!」
鬼の王子が困った様子で、部長を止めた。けれど、盛り上がっていく周囲の反応が楽しいのか部長は話を終わらそうとしない。
「うわ~意外だ! 課長でもノロけるんですね!」
「鬼木は愛妻家だからな。家柄もしっかりとしたお嬢さんだし、おっとりとしていて可愛くて、鬼木には勿体ない嫁だな」
ハハハハと部長は豪快に笑った。
男の子たちも楽しそうに笑う中、話題を振った女の子たちの顔が引きつっていた。
その様子を察した部長が、
「まあ、お前達がいくら束になったところで敵わない子だよ。くれぐれも鬼木の嫁に対抗しようなんて気を起こさないことだな」
と言って、ほら仕事に戻れ、シッシッと犬や猫を追い払うかのように手を振った。
そして女の子たちは、ぶーぶー文句を吐きながら自分のデスクへと戻っていった。