上司に恋しちゃいました
自分と、奥さんとの違いをまざまざと突きつけられた。


分かっていたはずなのに、何も分かっていなかった。


しょっちゅう会ってくれるから、奥さんとは上手くいっていないのだと思っていた。


心のどこかで、あたしは奥さんより愛されていると思っていた。


あたしとの関係がありながら、奥さんと別れないのはきっと、複雑な事情があるんだろうって、自分の都合の良いように解釈していた。


全て偽りだったのに。


「好きだ」なんて言ったあの言葉を、どこかで信じていた。


心の拠り所にしていた。


ベッドの中で男が囁く言葉なんて、信用してはいけないのに。


分かっていたのに。



あたしだけは別だなんて、恋を知らない、ウブな乙女じゃあるまいし。

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