上司に恋しちゃいました
すると鬼の王子は寂しそうに「だってお前、ヤルことヤったらすぐ帰っちゃうじゃん」と言った。


「や…ヤルことヤったらって! 人を好きモノみたいに……!」


怒りを露わにしているあたしに、鬼の王子は慌てて言葉を付け足す。


「俺だって何度も言おうとしたさ! でもお前……俺のこと全然好きじゃないみたいだったから……」


「だってそれは……!」


拗ねた子供のように言う鬼の王子を見て、何に怒っているのか分からなくなってきて、笑いが込み上げてきた。


肩を揺らし笑い出したあたしを、鬼の王子は不気味そうに眉を寄せた。


なんだかもう、笑いが止まらなくなって、両手で顔を埋めて笑った。


すると笑いが涙に変わっていき、笑い声は嗚咽(おえつ)へと変わり、気付くと号泣していた。


「お…おい! なんだよ、どうしたんだよ!」


泣くあたしを見て、オロオロ慌てだした鬼の王子。


なんだか悔しかったので、そのまま何も言わず泣き続けた。



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