上司に恋しちゃいました
鬼の王子の唇があたしの唇から離れると、イタズラ少年のように「シー」と人さじ指を唇の前に立てた。


「シーって……課長っ!」


「大丈夫、もう皆帰ったって」


「でもっ!」


「美月は相変わらず真面目だなぁ」


『真面目』と言われて、鬼の王子を拒む気持ちが失せた。


やっぱりあたしって真面目すぎるのかな……?


「ここでしよっか?」


「えぇっ!?」


つい大声を出してしまって、鬼の王子から「シー」と再び咎められた。


「なななな、何を言ってるんですかっ!?」


「ダメ?」


「ダメに決まってるじゃないですか!?」


鬼の王子は「やっぱり美月は真面目だ」と唇を尖らせた。

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