上司に恋しちゃいました
「あ…待って!」


追いかけようとすると、ぐいと腕を掴まれた。


「追いかけてどうするんだ?」


「誤解を解かなくちゃ!」


「何のために?」


「何のためにって……」


「俺たちは結婚するんだぞ? いいじゃないか退職が早まったと思えば」


あたしは言葉に詰まり鬼の王子の顔を見上げた。


……退職が、早まる?


「明日にでも公表すればいい。

俺と美月が結婚すること。この指輪はダミーだってことも。

そうすれば、怒っている相手にわざわざ丁寧に説明しなくてもいいだろう?」


それは……一番簡単で労力も少なくすむ、最もな意見だけど。


でもそんなのなんだか……。

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