上司に恋しちゃいました
「……辞めたくないのか?」


「まさか、そんなことないです! 辞めずに課長と結婚したら、会社の女の子にいつか殺されちゃいますもん。あたしは今の仕事を続けることより、課長と結婚したい気持ちの方が強いです」


冗談っぽく言ったけど、嘘はついていない。


でも、あたしの口から出たはずの言葉が、あたしの耳に届くと、空虚に響くのはなぜだろう。


「そっか……」


鬼の王子は安堵の表情を浮かべた。その顔を見ると、グサリと大きな棘が胸に刺さった。


……分かってしまった。鬼の王子の考えが。


ううん、分かっていたじゃない。


最初から「会社を辞めてくれ」って言われていた。
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