上司に恋しちゃいました
「おい、美月! 聞いてるのか!?」

「分かったから! 怒鳴らないでよ!」


鬼の王子とあたしは、肩で息をしながら睨み合った。


鬼の王子は目線を逸らすと、ごめん、と小さく一言呟いた。


「ちょっと、煙草吸ってくる」


ベランダに出て行った鬼の王子の後ろ姿は、明らかにまだ怒っている様子だった。


一人取り残された部屋で、あたしは茫然と立ちつくしていた。


手足が震えて止まらない。


声を荒げた自分自身にもびっくりした。


< 262 / 341 >

この作品をシェア

pagetop