上司に恋しちゃいました
「忙しくなって、主婦業を完璧にこなせなくなるかもしれない。

でも、頑張りますから! 迷惑かけないようにしますから!」


駄目……ですか? という言葉を発しようとして飲み込んだ。


『駄目だ』って言われたら諦めるの?


諦めていいの? やっと自分のやりたいことを見つけたのに。


あたしは震えていた唇から、ありったけの気持ちを込めて吐き出した。





「……やらせてくださいっ!」





口に出すと、息が上がっていた。


心がスッと軽くなって強くなれた気がした。


鬼の王子は目を丸めて驚いていたけれど、顔を真っ赤にさせて息を切らしているあたしを見て、プッと笑った。


「美月のやりたいようにすればいい」


すべてを包み込んでくれるような、優しい笑顔だった。
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