上司に恋しちゃいました
架空の奥さんの嘘話をしたことを反省する素振りは全くなく、皆呆気に取られていた。


女子の中には怒りで震えている子もいたほどだ。けれど部長に文句を言えるはずもなく、声に出せない不満を、口を金魚のようにパクパクとさせていた。


そして部長は、「そういうことだから、さっ仕事、仕事っ!」と手をパンパンと叩いて、皆を持ち場に戻らせた。


きっと皆、あたしや鬼の王子に聞きたいことが山ほどあるに違いない。


けれど、腫れ物を触るように誰もあたしに近寄ってこなかった。


――たった一人を除いては。

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