上司に恋しちゃいました
「深川さん……

結婚、するんすね」


果敢にも声をかけてきたのは島田君だった。


島田君に話し掛けられて、嬉しいような、逃げ出したくなるような、切ない気持ちになった。


あのキスの記憶が蘇ってくる――



「う、うん。そうなの」


島田君は悲しそうに頭を下げていた。


落ち込む様子を隠そうとしないその姿に、胸がズキンと痛む。


「鬼の王子には勝てないっす。幸せになってください!」


……ニカっと笑ったその顔を、あたしはずっと忘れないと思う。


ありがとう、島田君。

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