上司に恋しちゃいました
「……? どうしたんですか?」


「いや、悪かったな~って思ってたんだよ。

俺のせいで皆に知らせるの最後の日になっちゃって。もし相手が俺じゃなかったら美月は辞めずに済んだかもしれないし、辞めるとなっても退職当日発表なんてことにはならなかったのにさ」


「みなさん、最初は驚いていたけど、最後は祝福してくれましたよ?」


「それは美月の人徳だよ。
美月が一生懸命仕事してたの、皆気付いてたから」


その言葉にぐっと胸が締め付けられて、大きな花束の中に顔を埋めた。


この一言で、三年間の努力が全て報われた気がした。



会社を背中にして、笑い合いながら歩き出す。


鬼の王子はあたしの鞄を持ってくれて、あいた左手で鬼の王子と手を繋いだ。


これからは鬼の王子と二人で、新たな人生を歩みだすんだ。


空を見上げると、ビルから零れる明かりが、星々のようにあたし達を照らしていた。



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