上司に恋しちゃいました
「お義父さん」


優しく慈愛に満ちたその声に引きずられるように、お父さんは顔を上げた。


「娘さんを俺にください」


お父さんは黙って睨みつけるように鬼の王子を見つめた。


「絶対、幸せにしますから」


その言葉にお父さんは顎(あご)に皺(しわ)を寄せて、渋々ながらもあたしの腕を離した。


「お父さん……」


あたしが声を掛けると、お父さんはふてくされたように、ぷいと横を向いて何も
なかったような顔をして最前列に加わった。
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