上司に恋しちゃいました
「ああ、でも、ウェディングドレスのデザインはいくらでも思いつくけど、事業家の才能が自分にあるとは思えないな……」


ぼそりと呟いた言葉に、鬼の王子は反応した。


「美月はひとりでコツコツ頑張る芸術肌だからな。

上に立つ人間は嫌われ役を買ってでないといけない場合もあるし、叱らないといけない場面もある」


部下を怒るなんて、自分にできるとは思えなかった。

褒めることすらできないかもしれない。


「でもな……」と言って鬼の王子はあたしの頭の上に手をポンと乗せた。


「ひとりで全部の仕事をやろうなんて、思わなくていいんだ。

誰しも得意不得意がある。補い合って仕事をしていけばいいと思わないか?

経営が苦手だと思うなら、誰か得意な奴に任せればいい」


……そうだった。


仕事中何度も課長に怒られてきた、根本の理由だった。


『もっと頼れと言っているんだ』


その言葉の意味が、今大きく花開こうとしていた。


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