上司に恋しちゃいました
「はい、仕事の話はここまで」


パンと手を叩き、鬼の王子は話をそこで打ち切らせた。


その音にハッと我に返る。


そうだ、今日は結婚式だったのになんてロマンチックの欠片もない話を……。


「ご、ごめんなさい。あたしすっかり夢中になって……」


「夢中?」


鬼の王子は眉根を寄せて顔を寄せた。


「俺以外に夢中になるなんて、大した度胸だな」


怒った顔がどんどん近付いてくる。


あまりにも近くて、思わず後ずさると、腰をぐっと引き寄せられた。


鼻がくっつきそうなくらい近い。


力強い眼力に耐えられず、目を背けるように顔を横に向けると、それを制するように唇が触れた。
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