上司に恋しちゃいました
魅惑の王子
――それから数日間、何もなかったかのように日々は過ぎていった。



あの一夜は幻だったのか。



そんな風にさえ思えてしまう鬼の王子の変わらない態度。



あたしは毎晩、あの日のことを思い出してしまうのに。



鬼の王子にとっては一晩の遊びだったんだ……。



そうしたかったのはあたし自身なのに、妙に切ない気持ちになる。



唯一感謝する所があるなら、5年付き合った彼氏に裏切られた悲しさはどこかに飛んでしまったということ。



あたしは彼の何が好きだったんだろう。



優しくて誠実そうな所に魅かれたわけだけど、優しいのは最初だけ。しかも誠実どころか平気で二股して謝りもしない最低な男だった。



堅実な道を選んで生きてきたはずなのに、あの日から歯車が狂ってきた気がする……。

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