夏空
「平川くんって、好きな人いるの?」
私がそう聞くと、平川くんは女の子みたいな顔を真っ赤にした。
そんな平川くんを見て、さらに問い詰めようとしたところで、生徒会室の扉が開いた。
「康助先輩、土屋先輩、こんにちは!」
我先にと平川くんが挨拶をする。
土屋先輩とは土屋杏里(つちや.あんり)のこと。
可愛い私の後輩で生徒会書記。
私は勝手につっちーと呼んでいる。
「さ、全員そろったしはじめよっか」
私の言葉で会議が始まった。
会議と言っても、生徒だけのラフなものだ。
「まず、学年の様子について発表してください。
じゃあ、一年生から」
まず、一年生の平川くんが立ち上がった。
一年生は特に異常はないらしい。
「次、つっちーよろしく」
二年生のつっちーが話しだした。
「二年生は表では、異常ありませんが………」
つっちーは、なにかを言いにくそうに躊躇っていた。
「………裏では女子の間でリストカットが感染しだしてます」
心なしかつっちーの声が震えていた。
話し終わったつっちーは、ゆっくりと座った。
そして、泣いてしまった。
明るかった生徒会室がどんよりとする。
私は怖かったんだろうと思った。
「……友達が……親友が」
私はつっちーの横で相槌をうちながら聞いていた。
「止めようとしたけど、無理だったの……で、私まで………」
ハッとした私は、つっちーの手首を見た。
そこには一本の線があった。
「まだ、やってるの?」
私の質問につっちーは首を縦にふって、今の時期珍しい長袖のワイシャツの袖を捲り上げた。