君の瞳‐ヒトミノオク‐
待っていた恵那と一緒に帰る。
華奢な身体に、ふんわりした空気。
樫崎とは正反対。
…樫崎はどうして、あんなに恵那を嫌うんだろう。
恵那はこんなにいい子なのに。
2人の間で何かあったのか…?
「…なあ、恵那」
「ん?なぁに?」
柔らかな笑顔を向けてくる恵那。
誰かが嫌う要素なんて1つもない。
けど、樫崎が言ってた“俺の幸せ”って?
恵那と一緒じゃ幸せになれないってこと?
「樫崎と何かあったの?」
「え…っ!な、何も…ない、よ…っ?」
「本当に?」
正面に立って、顔を覗き込む。
やっぱりどこか怯えていて、震えてる。
「っ…あたし、樫崎さんに…邪魔って言われ、て。
優介はあたしのって…。
優介くんは物じゃないって言ったら、うざいって言われて…叩かれ、たの…っ」
静かに泣き出した恵那を抱きしめる。
納得する反面…どこか素直に受け止められなかった。
樫崎は確かに口が悪いけど、人を物扱いするような奴じゃない。
手だって…部活に支障が出るからって、出さない。