君の瞳‐ヒトミノオク‐



 …さて、奴も動いてきたしな…。

 あたしも覚悟しとかないと。

 …いや、もう遅い…か。

 ふ、と自嘲する。

 あたしの目的は優介の幸せ、ただそれだけ。

 じっと前を見据える。

 何があったって、あたしは大丈夫。

 大丈夫…大丈夫。

 誰にも理解されなくっていい。

 あたしはあたしなりのやり方で優介を守ってやる。

 教室の前で1つ深呼吸。

 それから…ドアを、開けた。


「……」


 黙って机に向かう。

 中身を全部出して、鞄を掴む。


「…人殺し」

「……」

「恵那のこと突き落としたくせに!」


 はあー…あほらし。

 相手する気にもなんないわ。

 そのまま出入口に向かう。

 塞がれる進路。


「…何」

「土下座して謝れよ」

「はあ?バカじゃないの?
 脳みそ入ってる?」


 何でお前に謝んなきゃなんねーんだっつの。

 つーか謝るようなことしてないし。

 聞いた話でよくそんなこと言えるよねー。

 まじガキっぽい。


「いいから土下座しろよ!」

「どーげーざ!どーげーざ!
 どーげーざ!」


 教室中でコールが鳴る。



< 16 / 91 >

この作品をシェア

pagetop