君の瞳‐ヒトミノオク‐
可愛いねぇ…なんだかんだ言ってアイロンかけてくれるし。
けどやっぱ笑顔のほうがいっか。
「乙音ー、ごめんね?」
「これからはしないでよね?」
呆れたように笑う乙音にあたしも笑い返す。
笑っていれば幸福が訪れると、そう言ったのは母さんだった。
だからあたしは笑っていよう。
大切な君に、幸福が訪れるように。
―――――
「恵那ちゃん突き落としたって…」
「やっぱ矢嶋くん絡み?」
ジロジロ見てくる視線を無視する。
やっぱイヤホンしてても聞こえてくるか…。
無駄に耳いいからなぁ…。
昇降口を通ると、見慣れた背中があった。
「優介、おはよー!」
パッと振り返る優介。
何でそんなに驚いてんだろ??
「一緒行こー」
「…なんで、」
「ん?」
靴を履き替えて優介を見上げる。
イタズラされてないみたいだし、よかったよかった。
優介は…あたしを、睨んでいた。
「よく俺に話し掛けられるな…」