君の瞳‐ヒトミノオク‐
鞄から荷物を出しながら返事する。
何も盗られてないし…大丈夫か。
「星野って奴突き落としたってまじ?」
「…そうだって言ったらどうする?」
にやりと笑いながら見つめ合う。
お互いに逸らさない目。
さあ、先に逸らすのはどっちだ?
「…そこは否定しろよ」
くしゃりと笑う恭平。
ま、あたしが負けるはずないけど?
「本人がそう思ってんなら否定したって無駄じゃん」
「ま、そうだけどな」
ペットボトルの水を飲む。
あたしは誰にどう思われようがどーでもいいし。
優介の為なら何だって耐えてやる。
「俺は礼央はそんなことしないって信じてるよ」
「勝手にそう思っとけば?」
「おう、勝手にそう思っとく」
シャワー室に向かう途中、口許を緩めた。
わかってる奴はわかってる。
そんな当たり前のことが、無性に嬉しかった。
「てか、俺“は”?」
「…俺“たち”だな」
にっと笑い合う。
俺たちってのは、水泳部員のこと。
ま、人数少ないから部活以外でも仲良いしね。