君の瞳‐ヒトミノオク‐



 恭平のセーターはやっぱりでかい。

 手とか指すら出ないし!

 一応、ちゃんと男なんだねー。


「さんきゅ、じゃああとでね」


 あたしだけ下駄箱が違うから別れる。

 にしても何で恭平顔赤かったんだろー。

 予選前なのに風邪とか?ないわー。


「はあ…」

「あれ、気付いてないね」

「まああれに気付くんなら恭平の気持ちも気付くだろ」

「礼央、自分のことには鈍感だからね…」










 部活はいつもより調子が良かった。

 タイムも良かったしね。


「明日は予選だから、気を緩めないように。
 3年気合い入れて!」

「はい!」

「2年は自己ベスト更新!」

「はい!」


 凛とした部長の言葉。

 ここで負けたら、もう終わりなんだ。

 …負けるはずないけどね。


「1年は自分の実力を試す!」

「はい!」

「全国行くよ!!」

「はい!!」


 そう、あたしたちは全国に行かなきゃいけない。

 こんなとこで負けるわけにはいかないんだ。

 少しはなれてるとこにいる孝平を見る。

 …絶対、全国に行って、優勝する。



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