君の瞳‐ヒトミノオク‐
「礼央、さっさと上がれよ」
「えー」
「えーじゃなくて、閉めるぞ」
「ちっ…りょーかい」
大人しくプールから出る。
孝平、怒らせたらうるさいんだよね。
「早坂も、付き合わせて悪いな」
「いいえー、それじゃ僕はこれでー」
「また明日ねー」
手を振れば、振り返してくれた。
んー、可愛い奴だなぁ。
後輩っていいよね、うん。
「早く帰るぞ」
「んー」
「…緊張してんのか?」
「はは、かもね」
一応あたしも人間ですから。
…明日、もしダメだったら…県大も行けないわけで。
そしたらもちろん関東も全国も行けなくなる。
来年だってあるけど、人間いつ死ぬかわかんないし。
つまりやれるとこまで全力でやんなきゃってことだからさ。
珍しく緊張してるんですよ。
「大丈夫だって」
孝平に頭を撫でられる。
低体温だからか少し冷たい手。
「礼央だろ」
「…それ応援?」
苦笑するしかないじゃん…。
あたしだから、…負けないって?
そーね、うん…当たり前だね。