君の瞳‐ヒトミノオク‐



 帰り支度をして、いつもの4人で帰る。

 バス停で2人と別れてあたしと孝平は駅へ向かう。

 どこが強いか、誰が速いかなんて話す。

 あたしのほうが近いから最寄り駅で降りて、夜道を歩く。

 いろんな人に応援されたけど…。

 あたしは優介から、応援されたいんだ。

 ただそれだけでやる気が出てくるのに。


「…はあ」


 頑張れ、って…言ってくれないよね。

 やっぱ予選前に片付けとくべきだったかな…。


「礼央っ」

「ん?」


 振り返れば赤い軽が道路沿いに停められていた。

 窓から顔を出してる見慣れた男。


「兄貴!」


 走って車に近寄る。

 にっこり笑ってあたしを見るその人。


――樫崎 陽司(カシザキ ヨウジ)

 あたしの1番上の兄。

 今美容学校に通ってる3年生。


「乗れよ、あ、ちゃんとエスコートしたほうがいい?」


 いたずらっ子みたいに笑う兄貴。

 兄弟の中であたしと兄貴はよく似てると思う。

 久しぶりに乗った、車の芳香剤だとか。

 あと好きな人のタイプとか。



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