君の瞳‐ヒトミノオク‐



「忙しいんじゃないの?」

「まあ忙しいっちゃ忙しいけど…明日、礼央予選なんだろ。
 試合は家族全員で行く決まりだからな」


 そう、なんでだか知らないけど。

 うちには『試合は家族全員で応援に行く』って決まりがある。

 まあ…母さんが作った決まりなんだけどね。

 うちに母さんに勝てる人いないから今もこうなってる。

 だから兄貴のバスケの試合も浩司の野球の試合も

 あたしの水泳の大会も乙音の吹奏楽の大会も

 潮の絵画コンクールだって、家族全員で行った。

 どんなに遠くても、ね。

 それを破ったらとんでもないことが起きるからみんな守ってる。


「みんな元気か?」

「相変わらずだよー。
 母さんはめちゃくちゃだし父さんは苦労してるし浩司はうるさいし乙音は世話してくれるし潮は生意気だし」


 こうやって聞いたらろくな家族じゃないな…。

 ま、事実なんだけど。


「はは、そっか」

「うん、兄貴は?」

「俺はー、もう少しで校内コンテストがあるから猛練習、ってとこかな」

「ふーん」


 コンテストとか…めんどくさそう。



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