君の瞳‐ヒトミノオク‐



「む…がさつな礼央姉に言われたくないんだけど」

「はあ?もう1回言ってみろチビ!」

「チビゆうなモヤシ」

「んだとこらぁ!」


 箸を置いて潮の胸ぐらを掴む。

 人が気にしてることをサラリといいやがって…!

 根暗チビのくせに!


「礼央、女の子がそんな口を聞くんじゃありません」

「っ、だって母さん、潮が…!」

「潮も、礼央は不器用なんだから仕方ないでしょう」

「…はい」


 ダイニングが静まり返る。

 さすが母さん…です。


――樫崎 双葉(カシザキ フタバ)

 あたしたちの母さんで、一家の頭領。

 誕生日席は父さんだけど、実質上なのは母さんだし。

 ちなみにあたしたちの名前は全員母さんが名付けた。


「潮、部活動は休むと私から言っておきます。
 いいですね?」

「はい」

「乙音も連絡しておきましょうか?」

「もう伝えたから大丈夫」

「そう…」


 うちは母さんを中心に回ってる。

 母さんはただの専業主婦なんだけど、普通の専業主婦じゃない。



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