君の瞳‐ヒトミノオク‐



 あたしたちの戦いは一瞬。

 頭で考えるより、身体を動かして

 自分と戦って、打ち勝つしかない。










 会場全体を包み込む緊張感。

 鳥肌立つし…武者震い?


「…礼央」

「…孝平」


 静かに向き合う。

 周りは騒がしいのにあたしたちだけ違う世界にいるみたい。

 目を見れば、心の中が見える気がした。

 …あんたの思ってることくらい、わかってるよ。

 でもそれは口にしたくないことだから。


「――勝つよ。
 ぶっち切りで優勝してやる」

「…礼央」


 少しだけ、孝平が笑った。


「みんな、行くよ」

「はいっ!!」


 会場にあたしが足を踏み入れたら、空気が変わった。

 …大したこと、してないんだけど。

 結局負けたし。


「樫崎だ…」

「わ…本物?」


 本物以外いないっつーの。

 違う奴いたら怖いだろ…。


「クスッ、礼央…見られてるよ?」


 隣にいる亜依那が言ってくる。


「そーね…見物料ふんだくろうかな」

「あははっ」


 いや、本気なんだけど。



< 62 / 91 >

この作品をシェア

pagetop