君の瞳‐ヒトミノオク‐



 あたしは安い女じゃないからね。

 どっかのバカ女みたいにヘラヘラしないし。


「樫崎、行くよ」

「はい、…じゃあね」


 手を振って歩き出す。

 途中で母さんたちが見えた。

 樫崎家大集合ですね。

 潮は嫌っそーな顔してるけど。

 …あとでいじめてやろ。

 ジャージを脱いで、孝平たちを見る。

 …よし、ちゃんと見てんね。

 人差し指を立てて、斜めに空を差す。

 そんなあたしにさらに集まる視線。


「――その目に焼き付けろッ!!
 大会新記録出して、全国制覇してやる!!!!」


 一瞬の静寂のあと…会場中が沸いた。

 呆然としてる孝平たちを見て、笑う。


「こら」

「いてっ」


 叩かれた頭を擦りながら部長を見る。

 まじで容赦ないし…。


「何するんですかぁ」

「あんたね…宣言したからには、本当に優勝してもらうからね?」

「はいっ!」


 だいじょーぶだいじょーぶ…

 だって、あたしだし?





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